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先日、信用金庫時代からお付き合いのあるお客様から相談を受けました。
このお客様、いわゆる「信用金庫にとってのいいお客様」です。
信用金庫にとってのいいお客様という定義は別に利益がすごい上がっているとか、規模が大きいということではありません。どのようにいいお客様かというと・・・
信金マンのノルマにひと通り付き合ってくれるお客様ということです。
私が信用金庫にいたときも大変いいお客様でした。預金のノルマが足りなければ(特に定期積金)協力してくれるし、新しい融資商品や保証協会の取り上げ件数の目標があれば資金使途などなくとも借りてくれるし、あるキャンペーン(VISAカードやKSDなどなど)があれば付き合ってくれるといった感じです。
商売自体は斜陽産業で非常に厳しいのですが、持ち前の明るさと営業力で創業から10年がんばってきた社長です。
ところが最近はいよいよ厳しいらしく、現在弊社で契約いただいている生命保険契約の解約の打診を受けました。
必要最低限の保障は残すとして、貯蓄性のある保険料が高い保険は解約することにしました。これ自体はやむを得ません。また社長が借り入れについて期間が短く割賦が大きく返済がきついといつも明るい社長が浮かない顔でもらしていたので、現在の金融機関からの借り入れをチェックさせてもらいました。すると・・・
ここ数ヶ月の平均月商1000万円弱に対して毎月返済と積立で200万円近くの金額が口座から引き落とされていました。
仕入れがない業種や利益率が高い業種ならまだいいのですが、利益率20%弱の会社ですので、月商1000万円でも仕入れ後手元に残るのが200万円弱です。つまり返済と積立で現金はなくなり、給料の支払いや家賃その他引落はできない勘定になります。
現在は借り入れたお金の残高でしのいでいる状況ですが、このままでは利益率の高い劇的な売り上げ増でもない限り破綻を待つばかりです。
聞いた感じだとここ2~3年に発生した借り入れは有効な資本投下のための借り入れではなく、返済のための借り入れに実質なっているようです。借り入れの本数も10本ほどになっていました。すべてお付き合い・返済のための借り入れといった感じでした。
ほとんどが保証協会付の借り入れ(金融機関がリスクを負わない借り入れ:参考5月31日ブログ)でしたが、いわゆる独自の融資(プロパー融資)も1本ありました。その内訳は・・・
金利6%・毎月の元金と利息で約32万円の引落・その残高が600万円強というものです。
このお客様、冒頭にも申し上げたとおりいいお客さまなので法人も個人も預金もそこそこありましたが、法人預金は担保に取られていました。そこで私はある提案をしました。それは・・・
この600万円強のプロパー融資と担保に入っている法人の定期預金とを相殺する交渉をすぐにしなさいという提案です。
保証協会の資金を預金で返済するのは金融機関にとってもともとリスクを負わない貸金の返済なので基本的にタブーですが、プロパー融資を返済するのは実質プラスマイナスゼロ(利息収入が減るということはありますが)です。
まして保証協会以外の借入残高と預金残高では預金の方が遥かに多いお客様なのにこの低金利時代に6%の借り入れをお付き合いで強要するのはさすがに私も問題と判断したので相殺の提案をしました。お客様を食い物にしすぎです。
またお客様は担保に取られている預金では何もできないものと思っていたようです。
ただしこの相殺交渉、金融機関側も預金は減るわ貸金も減るわということで色んな理屈をつけて抵抗するのは間違いありません。ですので強い決意を持って臨むように話をしました。
このお客様、相殺実施と年内に返済が終わる借り入れで割賦が120万円ほど減少します。あらたないいお客様的な無意味な借り入れをやめれば業況は厳しくとも現金収支はトントンでいけると思います。
ただ今回のケースは金融機関側に行き過ぎが垣間見えたので相殺交渉の提案を示唆しましたが、何でもかんでもプロパー融資と預金を相殺しなさいということではありませんのでご注意ください。ほどほどのお付き合いはしていきましょう。
相殺交渉に際しては顧問税理士などによく相談してからにしてください。
ここまでお読みいただきありがとうございます。