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地域金融機関の使命
地域金融機関の重要な使命は、地域密着型金融(リレーションシップバンキング)
という言葉に象徴されるように、その地域で経済活動を営む中小・零細企業や
その地域で創業しようとする起業家への金融的なサポートを通じて、地域活性化
の担い手へと育成することにあります。
顧客ニーズとのかい離
金融庁は、金融機関が企業の事業性評価に基づく融資や、経営改善・生産性向上
などの支援に積極的に取組んでいるか、実態を把握しようとしています。
今年3月、NTTデータ経営研究所に委託した調査結果が「金融機関の取り組みの
評価に関する企業アンケート調査」としてまとめられました。
アンケートの調査対象は従業員20人以下の企業で、有効回答数は2460件です。
まず、経営上の課題や悩みについてのアンケートでは、
1位は「人材不足・人材育成」で62.6%、2位が「売り上げや収益の減少」で43.6%に
なっています。
こうした経営上の課題や悩みをメーンバンクに相談しているかとの質問に対しては
「日常的に相談している」はわずか11.9%、一方「全く相談したことがない」は
44.6%となっています。
なぜ相談しないのかの回答は「あまりいいアドバイスや情報が期待できない」が
40.8%、「他に相談相手がいる」が40.6%になっています。
要するに小規模企業の半数近くはメーンバンクに対してコンサルティング的な
要素は期待していないのです。
その背景には、メーンバンクが顧客のニーズを把握しておらず、価値の低い情報
を提供している現実があります。
アンケート調査で、メーンバンクに提供してほしい情報としては「自社が属する
業界動向」が1位となっています。逆に必要ないのに多く提供される情報として
「金融商品に関する情報」「地域情勢」「経済・金融・国際情勢」が挙げられて
います。
顧客が必要としている情報と金融機関から提供される情報の間に大きなかい離が
あるということは、金融機関が顧客のニーズを把握する努力を怠っていること
を示唆しています。
問われる貸し出し姿勢
このアンケート調査では、信用保証協会の利用状況についても尋ねています。
44.0%の企業が「金融機関に勧められたから利用している」と回答しています。
これは銀行が自らリスクをとる融資に対して慎重になっていることの現れです。
この姿勢を改めない限り、企業が求めるニーズに対応することはできません。
地域金融機関にとっての喫緊の課題は、地域企業が必要としている情報提供を
含めたコンサルティング業務を重視したビジネスモデルの転換です。
リスク回避の貸し出し姿勢を改め、顧客のニーズに応え、その地域の小規模企業
やその地域で創業する企業を支援していくビジネスモデルを再構築することで
地域を活性化させることができれば、地域金融機関の存在価値が高まるのでは
ないでしょうか。